ルース
※
まだ気温が上がらない。
花粉症がキタ!と話題になったのは、もう随分前だっていうのに。
だけど、気温とゆっくり比例するように伸びていく昼間には、カラダをうんと反らして腕を高く高く突き上げたくなる。
大学から家までの帰り道、わずかな春を感じて、気持ちには少しずつ陽が差し込んでいた。
でもわたしの足取りは重かった。
玄関の鍵をひねる。中に入る前に、一旦息を整えてから一歩踏み込む。
なんの気配もない。はぁっと息を吐き出す。
やっぱりシンゴはいなかった。
わかっていたことだったけど、今日はやっぱりいて欲しかった。
気分がだんだんめいってくるのを特に抑えもしないで、電気をつけ、カーテンを閉める。手を洗う。テレビのスイッチを入れる。
ワワワ、とテレビの笑い声が静かな空気を揺らして、またなんでもない夜が始まろうとしていた。
「しょうがないか」
一人しかいない部屋の空気にそれは静かに吸い込まれていった。
冷蔵庫からキャベツを取り出し、冷凍しておいた豚肉をレンジで温めた。鼻歌をうたいながらざくざくキャベツを切る。同時に鍋を火にかける。
納豆ごはんに茹でたキャベツと豚肉に胡麻のドレッシング。わたしの夕飯の定番だ。
花粉症がキタ!と話題になったのは、もう随分前だっていうのに。
だけど、気温とゆっくり比例するように伸びていく昼間には、カラダをうんと反らして腕を高く高く突き上げたくなる。
大学から家までの帰り道、わずかな春を感じて、気持ちには少しずつ陽が差し込んでいた。
でもわたしの足取りは重かった。
玄関の鍵をひねる。中に入る前に、一旦息を整えてから一歩踏み込む。
なんの気配もない。はぁっと息を吐き出す。
やっぱりシンゴはいなかった。
わかっていたことだったけど、今日はやっぱりいて欲しかった。
気分がだんだんめいってくるのを特に抑えもしないで、電気をつけ、カーテンを閉める。手を洗う。テレビのスイッチを入れる。
ワワワ、とテレビの笑い声が静かな空気を揺らして、またなんでもない夜が始まろうとしていた。
「しょうがないか」
一人しかいない部屋の空気にそれは静かに吸い込まれていった。
冷蔵庫からキャベツを取り出し、冷凍しておいた豚肉をレンジで温めた。鼻歌をうたいながらざくざくキャベツを切る。同時に鍋を火にかける。
納豆ごはんに茹でたキャベツと豚肉に胡麻のドレッシング。わたしの夕飯の定番だ。