ルース
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午後の授業は、みな目を開けながら眠っているみたい。
朝の静けさとはまったく違う種類の、重くて柔らかい静けさなのだ。みんなあらがえずにゆっくり飲み込まれていく。
睡魔はわたしにも容赦しない。瞼が何度もゆっくり降りてくる。
そのたびに無意味に手を動かしたり、ぎゅっと目を閉じたりするけど、駄目だ。
もう少ししたら霧が晴れてくみたいに、爽やかに視界が拓けてくるんだけれど。
大きな階段教室の教壇で、講義を続けていた教授が一旦話を止めて教室を見渡す。マイクははぁっという教授の吐息を拾っていた。
そしてまた何事もなかったように話し始めた。
その時、ガラガラと教室の後ろの引き戸が開いて、敷き詰められた絨毯の床をざっざっと歩いてくる音がした。
瞬間、教室が少し目覚める。
その足音は私の席の左斜め前まできて止まった。
「今入ってきた君は、今日は出席にはなりませんよ」
と教授が言うと、
「あ、いいです」
とその青年は答え、ノートに黒板の文字を写し始めた。
そのシャープペンシルのさらさら…という音を聞くともなく聞いて、時折彼の横顔を見ていた。
色褪せた古着のジーンズに、Tシャツを重ね着して、右腕には葉っぱのマークの入ったリストバンド。