I am … 【完】
入院したときに看護師さんに渡したままだった母子手帳をそっと開いてみる…
毎回の妊婦検診の結果を書き込む場所には、入院前の検診分が記載されて以来、なにも書かれていない
本当はこのページ埋まるはずだったのに…
パラパラと捲ると、後半は産まれてからの記録や予防接種などのページ…
もう一度手形のページを開くと、隣の出生の記録のページに書き込みがあった。
死産 不明
嫌な文字が並ぶ…
もう…この母子手帳に何か書き込まれる事はないんだ…
手形がとれて嬉しい反面…事実を突きつけられたようで涙を誘う…
「大丈夫?これは、退院したら何処かに大切にしまっておいてください…毎日見なくていいから…たまに赤ちゃんを思い出してあげたらいいよ」
広瀬さんは、テーブルの上で器用に鶴を折りながり言った。
そっか…
忘れなくていいんだね…
もう使わない母子手帳と小さな箱に入ったへその緒…
私にはとても大切な
大切な証…
確かにあの子が存在したという…証。