I am … 【完】
連れていかれたのは陣痛室というところ。
広い部屋に病室と同じように仕切るカーテンがありベッドごと部屋に入れる。
そこに入り、カーテンを閉められると
「すぐに先生呼んできますから、旦那さんに連絡できますか?」
そう早口で言って部屋を飛び出していった。
「ま、待ってください!これって……
破…水ですよね??」
後ろ姿に慌てて問いかけた。
「まだわからないから!」
一人残された部屋に足音だけが響く……
なんでこんなことに……
携帯を持つ手が震える…
新ちゃん助けて…
リダイヤルから彼に電話をかける
「もしもし?」
仕事中はあまり電話に出ないのに、出てくれて良かった…
「新ちゃん…助けて…助けて…」
「どうした?何かあったの?」
「今どこにいるの?今すぐに、来て!」
言葉を発する度に大粒の涙が溢れる……
まだ信じられなくて…
信じたくなくて…
「どうした?!」
要領を得ない会話に彼も焦っていた
「もしもし、D大学病院の病棟主任の関根です、これから急いで病院にしていただけますか?」
いつの間にか部屋に来ていたベテランの看護師さんに突然携帯を取り上げられた。
新ちゃんはすぐに電話を切ったらしく、手元に戻されたときはもう通話は終了していた。
「すぐに御主人来てくれるから…」
入院生活でゴワゴワになった髪を優しく撫でて、真っ白なタオルを顔にあててくれた。
微かに病院独特の匂いのするタオルに、じんわりと涙がしみこんですぐに重たくなっていく…