キモチの欠片
「スミマセン、大変ご迷惑をお掛けしました」
水道の蛇口を捻り水でガラガラとうがいしてハンカチで口を拭いながら朔ちゃんに平謝り。
「マジでお前は進歩がねぇな。いつも飲みすぎんなって言ってるだろ。自分の限界を知れよ。あんなとこでゲロぶちまけてみろ。ひんしゅくもんだぞ。お前のこの耳は飾りか?」
「痛いよ、朔ちゃん」
あたしの耳を引っ張りながら朔ちゃんのお小言が炸裂する。
「お前、マジで反省しろよ」
「はい、この通り反省してます……」
もう返す言葉がなく、ひたすら謝った。
リバースしてスッキリしたけど今度は眠たくなってきた。
自分でも子供か!って言いたくなるような欲望に忠実な身体。
「すみません、トイレありがとうございました」
「ご迷惑をおかけしてすみませんでした」
朔ちゃんと二人、居酒屋の店員さんに謝罪とお礼を言った。
そして、店を出ると当然のように誰もいなかった。
まぁ、それはそうだよね。
「おせぇ」
どこからか不機嫌な声が聞こえた。
キョロキョロと周りを見ると紙袋を抱えた葵が少し離れた電柱にもたれ、こっちを見ていた。