キモチの欠片
ひゃっ、葵の息が耳にかかる。心臓がドクンとあり得ないぐらい激しく脈を打つ。
この状態はかなり恥ずかしいものがあり、動揺が隠しきれない。
「お、男って……」
ゴクリと唾をのみ絞り出した声はやけに小さく頼りなくて掠れている。
「………………朔ちゃん」
ボソリと不機嫌な声が背後から聞こえた。
朔ちゃん、て。
「えっと、朔ちゃんはあたしのママのお兄さんの子供……、だけど、」
「じゃあ、いとこってこと?」
「そうだけど、それがなにか、」
言い終わる前に、葵ははぁーとため息をつきあたしの右肩に顎を乗せた。
……っ、なんなの。
葵はあたしの心臓を壊す気なの?さっきからどんだけドキドキさせればいいのよ。
「……………かった、」
固まって動けないあたしの耳に聞き取るのがやっとなぐらいの小さな声がした。
よかった、と。