キモチの欠片
でも、この会社で再会した。
一目見てすぐにゆずだと分かった。
髪の毛も高校の時より伸びて化粧もしてる。
ふわりと笑う笑顔は昔のまま変わらない。
入社式の時、嬉しさで舞い上がりそうになるのを押さえ話しかけたら『なんであんたが……』というような表情で俺を見たんだっけ。
俺は毎日のように話しかけたけど、ゆずは冷たく敬語でよそよそしく答えやがって。
ムカついたけどそんなことじゃ挫けなかった。
先日、やっと俺が避けてた理由を説明し誤解を解くことが出来てようやくスタートラインに立った。
でも、コイツを狙っている人もいるから呑気にはしていられない。
今日の合コンであの人も本格的に動いてきそうだし。
ゆずは“超”が付くほど鈍感だから遠回しに言っても分からないだろう。
俺の隣で眠るゆずを見る。
次にこのベッドで一緒に眠る時は気持ちが通じ合っているといいけど。
「ゆず、……」
三文字の言葉を呟き静かに目を閉じて眠りについた。