キモチの欠片
意識し始めたキモチ

はぁ……朝からずっとため息がでている。
これで何回目だろう。

社員食堂で食券を手にボーッとしていた。


「あら、ゆずちゃん元気がないね。恋の悩みとか?」

八宝菜定食をトレイにのせてくれた食堂のおばちゃんが話しかけてきた。


「へっ?恋だなんて……。や、やだな。そんなんじゃないよ。おばちゃん、ありがと」

恥ずかしくなりトレイを受け取ると、食券をカウンターに置き逃げるようにその場を後にした。


恋の悩みってなに?
今までそんなことで悩んだことがなかったのでよく分からない。
うーん、と首を傾げいつもの席へと足を向けた。


「ゆず、こっちに来いよ」

あたしのお気に入りの席に座っていた葵がいきなり大声で叫び手招きした。

……っ!!!

ちょっと、なんでそこに座ってるのよ。
先を越されていたことに若干、苛立ちを覚えた。

葵の声に食堂にいた人達があたしの方を見る。


食堂には席が五十ぐらいある。

今は数人の女子社員、あとは男性社員が十五人程度いる。
男性社員の人たちは散らばって座っていて素知らぬ顔で、黙々とご飯を食べている。

女子社員は固まって席に座っていたんだけど、運悪く葵が座っている隣のテーブルに陣取っていた。
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