キモチの欠片

着替えが終わり、会社を出て歩き出すとニヤニヤしていた遥がやっと口を開いた。

「ねぇねぇ、あのスラッとしたイケメンは誰よ」

いったい誰のこと言ってんの?
スラッとしたイケメンというのが記憶になく頭にハテナマークが浮かぶ。


「遥、いきなりそんなこと言われても誰のことが聞きたいのか分からないよ」

「だからー、合コンと時に会った朔ちゃんて誰?」

「あぁ、朔ちゃんか。あたしのママのお兄さんの息子。イトコだよ」

「イトコかぁ。そっかそっか。じゃあさぁ、朔ちゃん紹介してよ」


お願い、とキラキラと目を輝かせながら言う。

オイオイ、遥は原田さん目当てだったんじゃ……。


「遥は原田さんのことが気になってたんじゃないの?だからあたしを合コンに連れていったんでしょ」


この変わり身の速さ、流石、あの広報部のお姉様たちに揉まれているだけのことはあるわ。
呆れを通り越して感心してしまう。


「そうだけど。でもね、原田さんもいいけど……」

「もしかして原田って俺のこと?」

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