キモチの欠片

えっ?
背後から声がし、あたしと遥は同時に振り返った。


「あ、原田さん……」

二人の声がハモった。
遥の声はいつもより弾んでいたけど。
それより、さっきの話の内容を聞かれてたら遥は気が多い女って思われるのでは?と余計な心配をした。


「お疲れさま、この前は楽しかったね」


ジャニーズフェイスを綻ばせて笑う。

この前って……あることを思い出しサァーッと血の気が引いた。
人のことを心配している場合ではなかった。

原田さんには葵と一緒のところを見られてたんだ。
しかも、キスしてる場面も……。

原田さんは忘れるとか言ってたけど、そんなの無理に決まってるよね。
恥ずかしくて顔がまともに見れない。


「ホントですね。私、原田さんがあんなに歌が上手いなんてビックリしました。もしよければ、またご一緒してもいいですか?」


遥は可愛く首を傾げる。
あたしはそれをポカーンと口を開けて見ていた。

ちょっとちょっと、遥サンよ、あんたはさっき朔ちゃんを紹介してって言ってたんじゃ……。


以前から思っていたけど遥は肉食女子なんだろうか?
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