キモチの欠片

「じゃ、俺はまだ仕事が残ってるから二人は気を付けて帰ってね」


原田さんは左手を上げ颯爽と会社に向かって歩いていった。


「やっぱり原田さんはいいよね。彼女いないみたいだから本気で狙っちゃおうかな」


ハンターの目をした遥がボソリと。
これが遥の本性か。

「遥、あんた朔ちゃんはどうなったのよ。さっき、紹介してって言ってたでしょ」

「えっ、そうだっけ?まぁ、欲張らずに原田さん一筋でいこうかな。ところで、柚音はどういうこと?さっき原田さんは羽山くんの名前を出したよね。しかも彼氏ってなによ」


遥はとぼけているけど、欲張るとバチが当たるんだから。
二兎追うものは1兎も得ずって言うし。

それより、やっぱり突っ込まれたか。


「あ、それはなんていうか原田さんの誤解というか、勘違いというか。えっと、」


言葉に詰まる。
遥はジリジリと追い詰めてきてその迫力に後退りしたら背後にいた人の足を踏んでしまった。


「いてっ、」

「あっ、すみません」

慌てて振り返ると痛さで顔を歪めた遠藤さんがいた。
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