キモチの欠片

「んー、葵くんのことでしょ。あれ?柚音、付き合い出したの?ママ、聞いてないけど」

ママはサラリと葵の名前を出しパパの眉がピクリと動く。


「な、なに言ってんの。あたし彼氏なんていないし、なんで葵の名前が出てくるの?」

ママがあたしの交遊関係をそこまで把握してるとは思えない。
なのに普通に葵の名前が出てくるのはおかしい。

幼なじみだから勘違いしてるとか?


「だって柚音は葵くんと同じ会社でしょ?それに……おっと、これ以上はお口チャック」


左手の親指と人差し指を引っ付けて輪を作り口元に持っていきチャックを閉める真似をした。


「どうしてそのことを……」

知ってるの?
あたしはママに葵と同じ会社だと話したことがないのに。

理由を聞いてもこの調子じゃ教えてくれないだろう。

ママの意味深発言に振り回されて納得いかない。

「柚音、それはどういうことだ」

ずっと黙っていたパパが眉間にシワを寄せ、低い声を出す。

悪いことをしてる訳じゃないのに冷や汗が出るのはなんで?
< 152 / 232 >

この作品をシェア

pagetop