キモチの欠片

二日後のお昼休み。
食堂でバッタリ原田さんに会った。

「やぁ、柚音ちゃん。この前はビックリしたね。あ、ここ座らせてもらうよ」

ニコニコと笑いながらあたしの前の席に座った。

そんな呑気な……原田さんが余計なことを言ったせいであたしは酷い目に遭ったのに。

「そうですね、原田さんのお陰でいろいろ追求されて大変でしたよ」


嫌味を込めて言ってみた。
それくらいは許されると思う。


「え、俺なんかしたっけ?」


首を傾げながら豚肉のしょうが焼きを口に運ぶ。
まるで一昨日のことなんて覚えてないよ的な物言いに唖然とする。

原田さんてこんなお気楽な人だったなんて思わなかった。
営業の若手のホープと言われているのは本当なのか怪しく感じてしまう。

でも、分かっててとぼけていたとしたら、原田さんはとんだ食わせ者だ。

原田さんとの今後の付き合い方を考えなくてはいけなくなるよ。
そんなことを考えていたらトレイを手にした葵の姿が視界に入る。

「ゆず、隣座るぞ」

そう言ってあたしの隣に葵が座ってきた。
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