キモチの欠片

「羽山くんは柚音ちゃんと付き合ってるんだよね?」

原田さんはあたしをチラリと見たあと葵に視線を向ける。

だからまだ付き合ってないって言ってるのに。
って、あたしったらまだってなによ!

そんなことを考えた自分に恥ずかしくなる。


「それは原田さんには関係ないと思いますけど」

葵は無愛想に答えるとコロッケを箸でサクッと半分に切った。

原田さんは葵の態度を気にすることなく言葉を続ける。

「それはそうなんだけどね。あの時、忘れるとか言ったけど、昔よく遊んでた柚音ちゃんの恋の行方が気になるし……。そういえば柚音ちゃんのお父さんは手強そうだよね。娘を溺愛してるように見えたけど」

葵はピクリと眉を動かしたあと、余裕の笑みを浮かべた。

「そんなの百も承知です。それなりに対策は練ってるし俺には強い味方がいるんで大丈夫ですよ。ご心配なく」

「そうなんだ。俺も応援してるから頑張ってね」

原田さんは満足そうに笑い、食堂をあとにした。

それより対策?味方?
なにそれ、意味不明なんですけど。
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