キモチの欠片

「みんなに自慢してたんだよ、あの人。この前ゆずと飯食いに行って帰りは送ったって」


苦虫を噛み潰したような顔であたしを見る。
なんて言ったらいいのか分からない。

遠藤さんもあたしとご飯食べに行っただけで自慢するって理解に苦しむ。


「おまっ、まさか家まで送らせてないんだろ?」

少し焦りの色を見せて席を立ち上がる。


「あ、うん。近くのコンビニで降ろしてもらったから。それに、二人きりじゃないよ。遥も一緒だったから」


あたしの言葉にほっとしたように息をはき、席に座る。


「それならいいけど。ゆず、誰にでも簡単に自分の家を教えるんじゃねぇぞ。なにかあってからじゃ遅いんだ。お前、なんか抜けてとこあるからマジで気を付けろよ」


いつにも増して真剣な表情の葵の言葉にドキッとした。

「うん、分かってる。心配してくれてありがとう」

抜けてるとか言われてちょっとムカついたけど素直に頷いた。
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