キモチの欠片

ご飯を食べ終え葵とエレベーターホールに行くとちょうど扉が開き、遠藤さんが出てきた。


「あ、柚音ちゃん。お疲れさま。この前は楽しかったね」

葵には目もくれず歩み寄ってくる。
なんでこんなタイミング悪く会ってしまうんだろう。


「お疲れさまです。先日はご馳走さまでした」

「ところで俺との食事のこと、考えてくれた?二日待ったので、そろそろ返事が欲しいんだけど」

はぁ……。
今、一番聞かれたくないことだけど返事しない訳にはいかない。
意を決して口を開いた。


「あの、誘ってもらえるのは嬉しいんですけど二人きりでの食事はちょっと無理で……」


俯きながら言うと遠藤さんの表情が険しくなっているのに気がつかなかった。


「どうして?羽山とは行けるんだよね?俺じゃ無理ってコイツとなにが違うの?」

突然、葵の名前を出され顔をあげた。
鋭い目付きで葵を指差す表情に鳥肌が立つ。

葵は黙って遠藤さんを見据えていた。
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