キモチの欠片
「そ、れは……葵は幼なじみだから」
遠藤さんと葵を比べることなんて出来ない。
遠藤さんはあたしに好意を持っていると言っていた。
だけど、その気持ちに応えることが出来ないから二人だけで食事は控えた方がいいと思ったんだ。
隣の葵をチラッと見上げると、あたしの視線に気付いたのか一瞬目が合った。
「そんなのズルいじゃないか。俺にだってチャンスをくれてもいいだろ。幼馴染みじゃないからと言って最初から無理なんて納得できないよ。だったら、みんなで何度も一緒に食事に行って交流を深めたら二人でも出掛けてくれるのか?なぁ、俺はどうしたら君と二人きりになれるんだ」
あまりの剣幕に言葉を失った。
ここまでされると、恐怖しか感じない。
「遠藤さん、柚音が困ってるんでそういうことを言うの止めてもらえませんか」
葵は半歩前に出てあたしの腕を引いた。
そして自分の身体の後ろにあたしを隠すように遠藤さんとの距離を取ってくれた。
あたしを守ってくれる葵の背中は、誰よりも頼りになると感じていた。