キモチの欠片
狭いエレベーターの中、葵と二人。
さっきの息苦しさから解放され、ほっと息を吐く。
「さっきは助けてくれてありがとね」
葵がいなかったらどう対応していいか分からなかった。
たまに遠藤さんがあたしを見る目が怖い時もある。
自意識過剰だと言われたらそうなのかも知れないけど。
「ゆず、遠藤さんは真面目で真っ直ぐな人だから期待させるようなことはしない方がいい。かといって邪険に扱うとあとが困る。あの人は厄介なタイプだから気を付けた方がいいぞ」
真剣な表情で喋る葵の言葉にゴクリと唾をのんで頷く。
「もしらなにかあったら必ず俺に言え。些細なことでもいいから困ったことがあったら電話でもメールでもしてこい。分かったな?」
あたしと視線を合わせて言う。
「うん。分かった」
それに応えるように何度も頷いた。
葵と別れ一階まで降りて受付の席に座る。
遠藤さん、これで食事に誘うのをやめてくれればいいけど……。
葵がいてくれるだけで心強かった。
気がつくといつもあたしを守ってくれる葵に手を伸ばしている。
親身になって考えてくれる葵の存在があたしの中でどんどん形を変え大きくなっていく。