キモチの欠片
あれから一週間、今日も朝から忙しい。
始業時間を過ぎ、少しずつ来客が訪れ香苗先輩と交互に対応していく。
「加藤コーポレーションの権藤と申します。営業部の伏見課長と約束をしているんですが」
そう言って名刺を差し出してきた。
隣りにいた部下であろう若い男性も「郡司です」と言って名刺を取り出す。
「加藤コーポレーションの権藤様と郡司様ですね。少々、お待ちください」
受話器を取り、営業部の伏見課長直通の内線をかけた。
「はい、伏見です」
「受付の河野です。加藤コーポレーションの権藤様と郡司様がいらしてます」
「応接室にお通ししておいて。すぐに行くから」
「分かりました」
電話を終えると、権藤さんと郡司さんを応接室へと案内した。
お茶の準備をしようと応接室を出た時、ちょうど伏見課長がやってきた。
「伏見課長、お疲れさまです。権藤様と郡司様の名刺を預かっています」
「そうか、ありがとう。割るけど、お茶じゃなくてコーヒーを三つ頼む」
「はい、分かりました」
言われた通り、コーヒーを淹れ応接室へと運んだ。