キモチの欠片

「そうだよ、俺が親父の会社を受けるように花音さんに言ったんだよ」

葵も身体を起こし、グシャグシャと頭を掻き観念したように口を開いた。

いきなりママが就職を薦めてくるからおかしいなとは思っていたんだ。
それよりさっきの葵の言葉が引っ掛かった。


「ちょ、ちょっと待って!今、重大なことサラッと言わなかった?俺の親父の会社って……」

答えを求めるように葵を見つめた。

だったら葵は社長の息子ってことでしょ。
そんなの一言も言ってくれなかったじゃん。

うちの両親だって葵のお父さんが社長だなんて言ってなかったし。
もう、頭ん中がパニックだ。


「知らなかったのか?会社名もHYMでHAYAMAのことなんだけど。それに、会社のパンフレットに社長の名前と写真が載ってただろ。だから、薄々気付いてるもんだと思ってたけど」

「し、知らなかった。葵が社長の息子だったなんて……」

愕然とし、ベッドに身体を沈ませる。

「ゆずは相変わらず鈍いな」

呆れたように言う。
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