キモチの欠片
番外編
「柚音、やっと葵と付き合うことになったんだね。ホントよかった」
しみじみ言いながらモスコミュールを飲んでいるのは、あたしの二歳上の姉、梨音。
葵と気持ちを通じ合わせてから約二週間後、お姉ちゃんを『ダークムーン』に呼び出していた。
お姉ちゃんはあたしと葵の高校時代の関係悪化を目の当たりにし、気にかけてくれていた。
だから関係修復に加え、葵と付き合っていることを直接報告したかった。
ついでに朔ちゃんにも言いたかったので、三人で会える場所としてピッタリだったのが『ダークムーン』。
バーは朔ちゃんにお願いして特別に開店前の時間に開けてもらった。
話していてお姉ちゃんは、あたしの知らなかったことを教えてくれた。
密かにあたしと葵がいつ付き合うのか楽しみにしていたらしいけど、葵のあたしに対する例の無視事件がありヤキモキしていたって。
しかも、あたしが落ち込んでいる姿を見て何度葵の家に怒鳴り込んで行ってやろうかと思った事か!と。
流石にそれはママに止められたみたいだけど。
あたしはその話を聞いて目を丸くした。
だって、お姉ちゃんが怒鳴り込んでとか言うから。
あたしにとっては優しいお姉ちゃんで、子供の頃からあまり姉妹喧嘩をした覚えがない。
お姉ちゃんが本気で怒る姿を見たことがないから、あたしの為に怒ってくれていたなんて知らなくて驚いたと同時に嬉しくもあった。