キモチの欠片
もどかしいキモチ


「おはようございます」

いつものように受付に座り笑顔で挨拶する。

ただ、いつもと違う事は昨日眠れなかったせいで目の下にくっきりと隈が出来てしまった事だ。
日頃、そんなに悩むことがなく久々に考え事をした結果がこれだ。
隈を隠そうと、なんとかコンシーラーを使ってメイクで誤魔化してはみたんだけど。


「ねぇ、柚音のメイク、なんか濃くない?」


隣に座ってる香苗先輩がまじまじとあたしの顔を見る。
やっぱり突っ込まれたか。

自分でも自覚していただけに指摘されると辛いものがある。


「そっ、そうですか?そんなことないと思うんですけど。おかしいなぁ」


ポリポリと人差し指で頬をかいてとぼけてみたりして。
その言い方があまりにも大根役者っぷりを発揮していて居たたまれない気分になる。



「それはそうと、羽山くんと話したの?」


あたしの心情はお構いなしに、香苗先輩の口から寝不足になった原因の名前を聞いてドキリとした。

< 31 / 232 >

この作品をシェア

pagetop