キモチの欠片


「それは、その……まだで、」


昨日は葵のことを考えてたらいつの間にか明け方になっていた。

逃げ帰ってしまったことに対しての罪悪感。
流石に、意地っ張りなあたしもこれは素直に謝らないといけないということは理解している。

だけど、どう切り出していいものかと頭を悩ましていた。

重い足取りで会社に来たのはいいけれど、さっきからエントランスの方が気になってしまう。
社員の人が出社してくるたびに目を向けていた。


葵はまだ出社してないみたい。
あぁ、どんな顔して会えばいいんだろう。キリキリと胃が痛く気が重い。



「あっ、羽山くんだ」


香苗先輩が耳元で囁いた。

気まずさからつい俯いてしまった。緊張から手に汗がじわりと滲む。


エントランスを抜け受付の前にゆっくりと葵が歩み寄ってきた。

今すぐにでもここから逃げ出したい衝動に駆られた。
けど、昨日の朔ちゃんの言葉が頭を掠めグッと堪える。


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