キモチの欠片
就職する気がなかったあたしは就職活動する事なく短大を卒業し、一年半ぐらいバイト三昧でフラフラしていた。
正直、パパには怒られるかな?と思っていたけど『柚音の好きなようにしなさい』と。
ママもパパの意見に従い、何も言われなかった。
両親のまさかの見守り体制に拍子抜けした。
でもその代り、兄姉にメチャクチャ怒られたんだよね。
『親父たちがなにも言わないからって好き勝手なことばかりするな。いい加減、真面目に仕事を探せ!』と会うたびにお説教。
流石にウンザリしていたので、どうにかしないといけないな思っていた頃。
ママがタイミングを見計らったかのように『この会社の入社試験受けてみない?』と会社案内のパンフレットを持ってきた。
その時は、まさかこんな大手商社に受かるとは思っていなくて軽い気持ちで受けたら見事、合格してしまったんだ。
この不況の中、合格したからには真面目に働かなきゃと改心し、地元に戻ってきた。
でも―――
葵があたしと同じ会社に入社してたなんて。
そして、ママが何でこの会社を薦めたのか、あたしは何一つとして知らなかった。