キモチの欠片
あぁ、あたしの予感は的中。
思わず目を瞑り唇を噛む。
ヤスに言われた通り、あたしは特定の相手を作ったりしていなかった。
だからって、とっかえひっかえしていた訳じゃないんだけど……。
県外の短大に行って周りの友達に影響され過ぎた、って人のせいにしてたらダメだよね。
全部、自分が悪いんだ。
まさか、あたしの過去を知る人に会うなんて考えてもいなかった。
地元だからって油断してた。
どうしようか途方に暮れていたら、葵の怒鳴り声が耳に届いた。
「ふざけんな。ゆずはお前が適当に遊んでいい女じゃねぇよ」
「はぁ?何言ってんの。あんた知らねぇの?コイツは見掛けによらず軽い女だぜ。あんたも遊ばれてんだろ」
ヤスはバカにしたように言う。
軽い女って酷い言われようだな。
でも自分のしてきた過去は消せないし、そう言われても仕方のない事なのかも知れない。
思わず自嘲気味の笑いが出る。
「てめぇ、今なんつった?ゆずのこと」
腕が緩み、あたしの身体が解放された瞬間、葵はヤスの胸ぐらを掴んでいた。