キモチの欠片
ハッとして視線を周りに向けると、いつの間にかあたしたちを多くのギャラリーが見ていた。
今更ながらこの醜態に頭を抱えたくなった。
もうどうしていいか分からず、ただ俯くだけしか出来ない。
「ゆず、行くぞ」
そんな身動き一つしないあたしの手を引いて葵は人混みを掻き分けるように歩き出した。
葵はあたしの手をギュッと握り、前だけを見つめて歩く。
ごめんね、葵。
あたしのためにそこまでしてくれなくてもよかったのに……。
葵の背中に向かって心の中で謝った。
自分のやってきた事だからヤスに言われても、ぐぅの音も出ない。
何より葵に知られてしまったことが嫌だった。
今さら綺麗ごとを言うつもりはないけど、たまたま居合わせた葵に不快な想いをさせてしまったという罪悪感が付きまとった。