お迎えに
「そっちには、何もないよ。君、名前はなんて言うの?」

「ナツキ。」

その声ははっきりと響き渡った。

「いい名前だね。ナツキはどうしてここにいるの?」耳に響く心地よい声だ。

風のような声だな。

春風のように爽やかで、人を不快にさせないような。
ナツキは声に誘われるまま答えた。

「どうしてって…。俺、起きたらここにいたんだ。」
ん?俺?いつも俺って言ってたっけ?

「ナツキは元いたとこに帰りたい?」


些細な疑問に囚われる前に彼が話しかけてきた。



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