あたしたち別れましょ。


鞄の中は数日分の服と化粧品。


服は箪笥の中に入れていく。

1枚1枚箪笥に入れていると服と服の間にハンドタオルが挟まっていた。



「これ…」



震える手でハンドタオルを鞄から出す。


広げるとみゆきのアップリケ。



「懐かしいな…」



手のひらに置いて優しく撫でる。


このハンドタオルが正樹との始まりを作った。



そういえば、同棲する時に持って行ったんだよね…。


あの出会いからずっと大切にしていた。



何か大切な事や大事な時にいつも持ち歩いていた。


でもいつからだろう…。

持ち歩かなくなったのは。



「あたしも変わっちゃってたのかな…?」



出会った頃の自分は1つ1つの出来事にドキドキしてたのに…。



「正樹のこと言えないね…」



お母さんに呼ばれるまでずっとハンドタオルを撫でていた。


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