あたしたち別れましょ。
「昨日、正樹さんに会いに行った」
「は?」
冷蔵庫に向けた手が止まる。
「正樹さん、少し痩せてた」
「…勝手に会いに行ったりしないでよ」
痩せてたのワードに心が動揺する。
「すごい落ち込んでた」
「…」
思い出すのは最後に見た正樹の姿。
「『お前の姉ちゃんの名前を木田美幸にしたかったのにな』って言われた」
「……そう」
木田美幸…それは遠回しの結婚を意味する言葉。
「姉ちゃん…俺は正樹さんと姉ちゃんのことは詳しく知らない。
だから姉ちゃんにヨリを戻せとも他の男を探せとも言えない。
でも詳しく知らない俺だから言えることもある。
ちゃんと話し合え。
じゃないと、姉ちゃんも正樹さんもお互い前に進めない」
遼太郎の真っ直ぐな真剣な目に少し驚く。
いつの間にこんな男らしい表情をするようになったのだろう。
いつの間にこんな良い男になっていたのだろう。
「遼太郎…ありがとう」
あたしは久しぶりに小さい頃いつもしていた遼太郎の頭を撫でる行為をやった。
遼太郎は一瞬驚くと一気に顔を赤くした。