あたしたち別れましょ。
遼太郎はあたしの目を見てゆっくり口を開いた。
まるであたしに言い聞かせるように。
「…素敵な人ってどんな人?
金を持ってる人?
優しい人?
かっこいい人?
面白い人?
なぁ、姉ちゃん。姉ちゃんは素敵な人を想像したら誰を思い浮かぶんだよ」
「………」
遼太郎の言葉に一瞬、呼吸が荒くなる。
「正樹さんじゃねぇの?」
何も言えなかった。
図星すぎて。
あたしの理想の素敵な人が遼太郎の言うとおりの人だったから。
「なぁ、姉ちゃん。もう1度ゆっくり考えてみろよ」
眉毛を下げて困った様な顔をする遼太郎を見て泣きそうになった。
「あんた…表情コロコロ変わりすぎ」
弟の前では泣きたくない。
そんな姉のプライドを守るために本当に心配してくれている遼太郎をおちょくるような対応をする。
でもいつもならこんな対応をしたら機嫌が悪くなる遼太郎が今回は違った。
「姉ちゃんが心配なんだよ」
普段見せない弟の素直な態度を見て姉の馬鹿みたいなプライドがあっさり壊れた。