あたしたち別れましょ。
「美幸は覚えてる?」
「なにを?」
「俺らの出会い」
「ここでしょ?」
肩に掛けてある鞄の取っ手を強く握る。
「ハンドタオル…今でも持ってるよな」
驚いて下に向けていた視線を優しい笑みをする正樹に向ける。
「なんで…」
「時々ベランダで干されてるハンドタオル。
いつも何の気なしに見てたけど美幸にフられて思い出した…あの時のハンドタオルだって」
「そっか…」
あたしと正樹を出会わせてくれたハンドタオル。
いつも“大事”な時にお守り代わりに持ち歩いているハンドタオル。
今日も今肩に掛けてある鞄の中にひっそり入ってるハンドタオル。
「みゆきちゃん…そう声を掛けるのにすげぇ時間が掛かった」
「え?」
「あの時、美幸がハンドタオルを落として大分時間が経ってたんだ。
でも…いざ声を掛けようと思っても可愛い子に話かける勇気が出なくてさ、本当俺ってヘタレだよ」
「そんな話し…」
「したことないよ。恥ずかしいだろ」