あたしたち別れましょ。


「確かにいきなりだね…でも、今ふと思ったの。このまま正樹と付き合ってたら、あたしは正樹と結婚するかなって」



「俺は…お前と結婚する気だけど?だから9年も付き合ってんだろ?」



正樹は、あたしが早く結婚したいが正樹がする気がないと見て別れを切り出したと多分勘違いしている。



「そうじゃなくて…あたしはあたしの将来のために別れたいの」



「は?」



「この先の未来を考えてみたの。想像したら、隣りに正樹がいた。

でも、あたしはそれが嫌だった」



「はっ……なんでだよ?」



「…今の正樹には、一生掛かっても分からないよ」



きっと9年も付き合ってきたせいだ。

お互いのことを分かりすぎた。


だからこそ、正樹にはあたしの気持ちは分からない。





「…訳分からねーよ」



寝っ転がっていた体を起こすと、頭を掻いた後手で顔を隠す。



その仕草をする時は正樹が落ち込んでいる時だとあたしは知っている。



きっと、いきなり別れを切り出されてショックで落ち込んでるんだ。


でも、今のあたしの心には響かない。




「正樹…今までありがとう。あたしの私物は今日少し持って帰るけど残りは正樹がいない時にまた取りにくるから。

その時に鍵をポストに入れておくね」



「…本気なんだな」



「そうよ。じゃあ、荷物積めるね」



正樹とは3年前から同棲していた。

だから荷物は1回では到底持ち帰れない3年分の量。



ベッドで力を無くしてただ座っている正樹と持ち帰れる量の荷物を積めるあたし。


2人は何も話さず無言の空気だった。

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