あたしたち別れましょ。
ハンドタオル。
正樹とあたしの出会いは15歳の春だった。
高校に進学して電車通学になったあたしは毎日7時45分の電車で前から2両目に乗っていた。
その電車にあたしが乗る駅から2つ先の駅で乗って来る男の子がいた。
それが正樹だ。
別に話す訳ではない。
ただ電車がいつも一緒だとしか思ってなかった。
ただ電車が一緒の人っていう認識から木田正樹に変わったのは16歳の冬だった。
「みゆきちゃんっ」
「え?」
電車の中で後ろから呼ばれ、振り返るといつも電車が一緒の男の子。
「なんであたしの名前…」
「みゆきちゃん、タオル落としたよ」
男の子の手には鞄の中にあると思っていたハンドタオル。
「あ、あたしの…」
ハンドタオルには“みゆき”の文字のアップリケをつけている。
「はい、どーぞ」
「あ、ありがとうございます」
あたしの元に戻ってきた“みゆき”のアップリケがついたハンドタオル。