あたしたち別れましょ。
「いつもこの電車に乗ってるよね」
「はい」
「H高の1年?」
「はい」
「じゃあ、タメだし敬語やめてね。俺、木田正樹。K高の1年。よろしくな」
「よろしく…」
同い年だったんだ…。
「何みゆきちゃんて言うの?」
あたしは携帯を取り出すと自分の名前を打ち込んだ。
「へー…伊藤美幸か。
美しい幸せで美幸か…すげー良い名前だな」
きだくんは笑顔であたしの笑顔を褒めてくれた。
「きだくんは、木に田んぼ?」
「そうそう。そんで、正しい樹木で正樹!」
木田正樹…。
こうして、いつも電車が一緒の人から木田正樹に変わった瞬間だった。