【完】『潮騒物語』
東神奈川、新子安、鶴見と東京に近づいてゆくので、ちょっぴり萌々子は不安になった。
が。
二人が川崎で降りた。
川崎駅を出ると二人はなぜか、駅に近いオフィスビルに入った。
ついてゆくと、トイレの個室に入り、しばらくすると中から女のあえぎ声が聞こえてきたのである。
(えっ…?!)
一瞬、萌々子は事態がよく呑み込めなかったが、中に駿太郎があって、他の女とそういう行為に及んでいるという事実だけは、時間を置いて理解ができた。
(こんなところでは)
泣きたくない、と萌々子は必死にこらえてビルを出た。
萌々子は気の抜けた足取りで、ようやく駅まで着くと、気づいたときには、慶の携帯電話にかけていた。