密儀【TABOO】

 父様と母様が家の前で花婿を待つというので、一人残された部屋で積み上げられた花嫁道具の一つ一つにそっと手を添えた。


 大丈夫、私が出発する前にあの方はきっと会いに来てくださる。

 冷たくなった漆の花器を箱に戻して、障子を少し開き冬の空を垣間見る。


 厚い雲に覆われた暗い灰色の空

 不安と不満を覆う空


「ゆき……」

「想(そう)様」


 彼は裏手から申し訳なさそうに顔を覗かせると、音もたてず独りぼっちの部屋に外の空気を運んできた。


「晴れ姿一目見て帰ろうと思ったけど、あまりに綺麗で名前を呼んでしまったよ」


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