密儀【TABOO】
「黙って帰られるなんて嫌です。きっとこの先お会いできることはないのでしょうから……」
彼の吐き出す白い息が愛おしい。
「そうだな、ゆきは立派な女房になれそうだ。あっちの家でも重宝されるだろう。ここに戻ってくることは二度とない」
想様の赤い指先が、いつものように私に触れようとして、でも、慌ててその指を衣の袖に引っ込めた。
「想様……」
「綺麗だよ、ゆき。こんな綺麗な花嫁どこを探したっていないだろうに」
「将来、想様の花嫁様になる方に叱られてしまいます」