「異世界ファンタジーで15+1のお題」一
町の中は大勢の人々で溢れていた。



(おい、レヴ、一体これはどうなってるんだ?)

(私にもわかるはずがないではないか…)

(俺達何もしてないのに、この前とはまるで違ってるじゃないか!)



正確には変わっているのは町そのものではない。
町は、私達が先日訪れた時のままだ。
ただ、その時はまるで死んだように静まり返り、そこには存在しなかった人々が存在し、息を吹き返していたのだ。



「レヴさん、広場はあっちだよ!
早く行こうよ!」

「そ、そうだな。早く行こう!」



私達は、じっくりと考える時間を持てないまま、広場へ向かった。
そこには、すでに大勢の人々が集まり、中央では見事なジャグリングの技が繰り広げられていた。
クラブがまるで生き物のように空中を舞い踊る。
観客は、その妙技に惜しみない拍手を送っていた。




「すごいもんだな!
僕が以前ここで見た芸とはレベルが違う!」

「たった2本の腕で、あんなに何本ものクラブを同時に操れるなんて、本当にたいしたもんだ!」

セルジュもグレンも、子供のように目を輝かせている。



その後も、ピエロのおどけたパフォーマンスや緊張感の漲るナイフ投げ等が続き、私達は、自分たちの深刻な状態のことも忘れ、その演技を楽しんだ。
楽しい時間はあっという間に過ぎてしまうもの。
気が付けば、あたりは薄暗くなり、大道芸の一行も荷物をまとめ始めていた。



「あ、そうだ!
ちょっとこの町のお客の所へ行って来ていいかな?
次はいつ来たらいいか、聞いておこうと思ってさ。」

「あぁ、じゃあ、俺達はここで待ってるからな!」

「すぐに戻って来るよ!」

そう言い残し、グレンは顧客の家へ走り出した。



広場の片隅に座って、グレンの帰りを待っていると、どこからか言い争うような声が耳をかすめた。



「なんだ?喧嘩か?
レヴ、俺、ちょっと見て来るな!」

「セルジュ、手を出すんじゃないぞ!」

彼の性格をそんなに深く知っているわけではないが、少し軽はずみな所があるのは間違いない。
喧嘩に巻きこまれて気が等しなければ良いが…と、心配になった私はエミルを連れて彼の後を追った。

そこには先程の大道芸人達と涙を浮かべた一人の若い女性がいた。
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