「異世界ファンタジーで15+1のお題」一
「あの…私は……」

話すとは言ったものの、やはり話しあぐねているのか、それとも混乱しているのか…
ルシアの口はなかなか明確な言葉を発しない…



「ルシアさん…
まず、最初に昨夜のことを話していただけますか?
昨夜、あの芸人達となにがあったんですか?」

私は、彼女が話しやすいように、少しずつ質問を投げかけていくことにした。



「あ…あれは…
あの人達に一座で働かせてくれるように頼んでたんです。
でも、私には出来る芸もなく、かといって力仕事も出来ませんし、今は手が足りてるからだめだと断られたのです。
でも、私はどうしても働かせてほしくて、それで…」

「芸人にでもなりたいのか?」

「そうじゃないんです。
ただ、私はこの先の町に行きたくてそれで…」

「この先の町に?
でも、それなら、あいつらと一緒じゃなくても行けるんじゃないのか?」

「それが…この先の町にはけっこう遠いとのことでした。
ですが、私にはお金もなければもう何日も食べてなかったのです。
こんな状態で、一人で行く事は出来ません。
ですから、なんでもいいから働かせてくれとお願いしたんですが、聞いて貰えなくて、私…もうどうしたら良いのかわからなくなって…」

「そうだったんですか…
お金がないということは…ご旅行かなにかされてて、盗まれでもしたのですか?」

「……え……ええ…
まぁ…そんな所です…」

ルシアは急に目を伏せ、小さな声でそう呟いた。
その態度に違和感を感じながらも、私は質問を続けた。



「では、なぜ、この先の町に向かわれているのですか?」

「それは……」

ルシアの言葉が再び停まった。



「知り合いでもいるのか?」

「いえ、そういうわけではないんですが…」

「そこに住んでるわけじゃないよな?」

「ええ…そうではありませんが…」

「では、なぜ…?」

「……私はどうしてもそこに行かなくてはならないのです。
行って、探さなければならない…」

「探す?何をです?」

「……と…時計を…」

「時計…?!」

ルシアの言葉を聞き、私とセルジュは顔を見合わせた。
おそらく彼も私と同じことを考えたのではないだろうか?

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