「異世界ファンタジーで15+1のお題」一
「はいよ。」

老婆が、無造作にテーブルの上にお茶を置いた。



「ありがとうございます。」

「さ、セルジュ、君もいただきたまえ。」

そう言いながら、私は老婆に気付かれないようにセルジュに目配せをした。



「あ…あのな、婆さん…
すまなかったな。
どうも、俺、さっきはなにかを勘違いしてたようだ。」

「ほら、見ろ。
やっと自分の間違いに気付いたか!」

「……………すまなかったな。」

セルジュは、感情のこもらない口調で老婆に謝った。



「…でも、なんだか、おかしな気はするのう…
わしはずっと長い事ここに住んどるが、今まで霧なんぞ見た事はなかったはずなんじゃが…
う~む…」

老婆は独り言のようにそんなことを呟いていては、何かを思い出そうとするように頭をひねっていた。



それからの数日間を、私達は老婆の家で過ごさせてもらったが、結局、あの白い霧に出会うことは出来なかった。







「どうやら、ここにいても無駄なようだな。」

「そうみたいだな。
しかし、これからどうする?」

「どうしようか…?」

「手掛かりを探すにしても、まったくあてがないよな。
……そうだ。
あの女神像の町に行って、森がどんな風になってるのか見てみようか?」

「そうだな。
とりあえず、今は、これといってすることもないし…そうするか。
それから先のことはまたゆっくり考えてみよう。」

「またグレンの所に戻るっていうのもいいかもしれないな。」

「そうだな…」



彼にはまた面倒をかけることになってしまうかもしれないが、この世界にもうしばらくいるとなると、やはり頼れるのは彼しかいない。



私達は、老婆に謝礼の金を手渡し、ここを離れることを告げた。

「なんじゃ、もう行くのか?
もっとおったらええのに…」

「いや、そろそろ行かなくちゃな。
婆さん、本当に世話になったな。」

私達は老婆に手を振り、家を離れた。
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