あの夏よりも、遠いところへ

わたしの知らない清見の話を、雪ちゃんは知っているんだろう。そんな感じがする。

やきもち妬かないことなんてことはないよ。そりゃ知りたい。好きだって自覚してしまったから。

でも、いまはいいんだ。これからゆっくり、知っていく。清見のこと、わたしのこと、お互いにもっと知っていけたらいいって、思う。


「わたしはさ、陽斗が好きだったよ」

「え?」

「だから雪ちゃんに本当に腹が立ったし、いまも、ちょっとむかついてる。陽斗にもね」


雪ちゃんが目を見張った。

わたしが陽斗を好きだってことはバレバレだったんだろうけど、初めてこんなふうに、面と向かって言ったんだもん。びっくりするよね。


「上手くいかないこと、いっぱいあると思う。人間だし。でも、好きなら手を離しちゃダメだよ。陽斗を幸せにできるのは、きっと雪ちゃんだけ」

「朝日ちゃん……」

「雪ちゃんを幸せにできるのも、きっと、陽斗だけだよ」


余計なお世話だとは思う。だけど、雪ちゃんは、言わないと分からないでしょう。


「……やっぱり朝日ちゃんはかっこいいなあ。まぶしいくらい」


かっこいいことなんてあるもんか。


「わたしにとっては、雪ちゃんのほうがずっと、まぶしいよ。自慢のお姉ちゃんだからさ」

「朝日ちゃんは、私の自慢の妹なんだよ?」

「……なにそれ」


反応に困るから、やめてよ。
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