あの夏よりも、遠いところへ
数えてみたら、なるほどたしかに、委員長を除いたクラスの女子23人分の名前が、もうすでに競技を振り分けられている。
あとは委員長ひとり。クラスによって人数は違うんだからどこかにてきとうに入れればいいものを、あいつらはまた、わざわざ大声で笑うんだ。いい性格してるな。
「なあ、委員長はなにがええ?」
「え……あ、私はなんでも……」
「はあ? 聞こえへんねんけど。なにぃ?」
怯えたように肩をびくりと跳ねさせて、委員長がそのままうつむく。
なにうつむいてんだよ! と、お尻を蹴ってやりたかったけれど、ここは我慢だ。わたしが怒ったって意味ない。
「委員長のせいで帰られへんねんけど」
「あ……あの」
「みんな迷惑してるねんで?」
誰も助けようとはしない。ただ他人事のように遠巻きに見て、嫌そうな顔をしたり、委員長に同情の眼差しを向けたりするだけ。
苛々する。高笑いをするあいつらにも、見ているだけのクラスメートにも、なにも言い返さない委員長にも。
「……あの、私!」
「はあ?」
「わ、私っ……」
委員長の視線があいつらを見上げた。すごい。いままで目も合わせられなかったのに、これは進歩だ。
がんばれ、委員長。同じ人間なんだから、怯む必要なんかどこにもない。