あなたには音をあたしには色を
光郎はそのまま、長い手足をブラブラさせて階段を下りて行った。
あいつ、またサボる気だな。
今から中間講評会があるのに……
もう教授達来ちゃうよ。
そういやまだ、光郎のキャンバス、白に近い状態だったな。
また教授に「やめてしまえ」って、怒鳴られちゃうよ。
あたしの予感は的中し、光郎は中間講評会にもアトリエには顔を出さなかった。
代わりに、クリーム色のギターがキャンバスの前に置いてある。
………
随分前から、光郎が学校を辞めるという噂があった。
光郎のギターを知らなかったあたしは面白半分で聞いていたけれど、今となっては真実味がある。
「プロになりたい」
それが昔からあいつの口癖だったし、それが絵画にしろギターにしろ、やっぱり同じ事なんだと思う。