あなたには音をあたしには色を
他の人の講評を聞きながら、ぼんやりとそんな事を考えていると、あたしは何だか途端に寂しくなってきた。
なんだか、光郎がグーーッと遠くなるような気がして。
多分今頃、昼間っからビールを飲んで美術棟の芝生に寝そべっている光郎。
だらしがなくて、ぐうたらだけど、いつも陰では一番頑張ってた。
それは、多分あたしが誰よりも知っている。
だからあたし、ずっと追いつきたいと思ってたんだ、光郎に。
負けたくない。
認められたい。
……光郎に。
そう思って、あたしはけっこう必死でやってきた。
2年の後期から抽象画を始めてから、すごくのめり込んで描き続けて、今、3年を終える所でやっと、光郎といい勝負ができると思ったのに。
そう思っていた矢先に、無言のまま向こうから戦いを放棄されてしまった。
そもそも。
光郎はあたしの事なんか、ライバルとは最初から認めてくれないだろうけど。