あなたには音をあたしには色を
………
「で、どうよ?」
夕方、学食で。
待ち合わせの時間に少し遅れて来た一美は、詫びれる様子もなくテーブルを挟んで早速あたしの顔を覗き込んできた。
昨日とは違う一美の化粧気のない顔が、つるんとして卵みたい。
「なにが、どうよ? なの」
「何がって、ミッチーでしょう」
そう言って汚いつなぎ姿で笑う一美は、彫刻を専攻している。
今は展示会前なので、いつもより張り切っている。
化粧もしないで、つなぎ姿で。
そうして、
「体力使うのよ」
と言い訳をして、一美はお気に入りのロールケーキを一人で一本平らげてしまう。
長い髪を耳の後ろで無造作に束ねて、形振り構わずにロールケーキを頬張る一美の姿は、その辺の下手な男より男前だ。