あなたには音をあたしには色を



やっぱり昼間から飲んでたんだ。
光郎の右手の先には、ビールのカンカンが揺れている。


「なに、あんた。中間講評会さぼったんだって? で、なに。飲んでたわけ?」


学食に入って来た途端に光郎は一美につかまって、渋々といった顔であたしの隣に座る。


……おっと。

昨日、キラキラの六弦を操っていた細いけれど逞しい腕がすぐ隣ににあって。
あたしは昨日のキラキラがさらにリアルに鮮明に蘇ってきて、不覚にもドキリとしてしまう。

あんまり側に寄られると、実に気まずいのだけど。


「おうよっ。芸術家、ことに音楽家なるものは、昼間から酒を飲むものなりーー」


「はあ? 偏見」


「はいはい、すんませんね」


「てゆうか、あんた音楽家じゃなくてバンドマンでしょ。」


「はいはい、昨日はあんがとねーっ、カズミー。サヨコもねーって……サヨコなに黙ってんの? 今日へんだよね、コイツ。俺、さっきもシカトされたし」


「しっ、してないじゃん」


一美がニヤニヤしてあたしの顔を見てるので、焦って声が上ずってしまう。



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