あなたには音をあたしには色を
「うん。今、展示前で忙しいからねえ、あたし。あとはゆーっくり、小夜子から昨日の感想、聞いたら? 」
その意味深な発言にまた、あたしの顔はカーーッと熱くなる。
そんなあたしを他所に、光郎は何も知らずにお惚け顔だ。
「あっ、そっか。そうだったな、ま、頑張れよぉ」
そう言って、一美に向かってバタバタと大きく手を振っている。
「おう! じゃね、小夜子も。また明日ねん」
「あ、あ、あ、うん」
……って、え?
この状況で光郎と二人っきり!?
ど、どーしたらいいの!?
あたしの心の叫びはもちろん声にはならずに、一美はヒラリヒラリ手を振りながら行ってしまった。
その後ろ姿を、あたしは無言のままで、ただ見送るしかない。