あなたには音をあたしには色を
3.
「………」
「………」
一美の不在で、あたし達のテーブルは一気に静かになってしまった。
光郎と二人で学食なんて、よくある事なのに、あたしの緊張は心臓に直に伝わって、ドクンドクンと音を立ててうるさい。
光郎に、聞こえてしまわないだろうか。
学食はこの時間は生徒もあんまりいなくて、いつもよりただっ広く感じる。
他には入り口付近に一組カップルがいて、何やらイチャイチャしているし、あとはその後ろに男三人組が、慌ててレポートかなんかをやっている。
今日はやけに静かだ。
………
「銀の針、なの? 俺のギター」
そんな静けさの中で、光郎はおどけた調子であたしにそう尋ねてきたけれど、その声にはどこか緊張感があった。
あたしの思い過ごしかもしれないし、学食の壁によく反響したからかもしれないけれど。
「……知らないよ、そんな事」
「何で!?」
「もう忘れた」
「えーー、もっと誉めてよ」
「は?」
「小夜子に誉めてもらおうと思ってさ、わざわざチケット余らしたのに」
光郎が、無邪気ににっこりと笑う。
屈託のない笑顔で。