あなたには音をあたしには色を
「あーんた、ミッチーと仲良すぎてさ、そうゆう目で見ないんでしょ」
「そーゆう目って、どーゆう目よ?」
「だからさ、男としてとかさ。ミッチーけっこうモテるんだよ、あのギターのおかげでさあ」
「……知らなかった。今日の今日まで」
「きゃあきゃあ言われてたでしょ? あいつ。いっつも、モサーっとしてるもんね、ガッコではさ。そのギャップがいいんでないの?」
一美はそう言って得意そうに足を組み換える。
いつも着なれないミニスカートが、タイツに擦れて動きにくそう。
………
知らなかった。
知らなかったよ。
光郎があんなにギターが上手くて、みんなにきゃあきゃあ言われてるなんて。
今でもまだドキドキしてたまらないよ。
光郎にというより、あの、音楽のキラキラの粒々に。
スピーカーから伝わる振動とか、降り注ぐ音とか。
安っぽいセロファンから溢れるカラフルな光とか。
チカチカと変わるステージの中の空気……。
その中を跳び跳ねて回る、見慣れているはずの長い手足。
光郎の、半分開いたエロっぽい唇。
そこから飛び散る汗のキラキラと、音のキラキラ。
キラキラ。
キラキラ。
銀の針。