あなたには音をあたしには色を
「みんな」とはまた、極端な偏見だ。
一美が聞いたら、鼻で笑うだろう。
「だけど色と音は違う。意味も理由も無限なんだ。……そん中でもギターはいいよ。なんたって、六弦しかない。オイラに与えられる道具は、僅か六弦くらいがちょうどいいのだよ、サヨコくん」
ウザイ。
そうしてこのウザさが、可愛いのです、光郎は。
あたしはその可愛らしさに自然に笑みが溢れる。
光郎はそれを、同意の微笑みと受け取ったようだった。
「オイラにはもう、色は扱いきれないと思ったのよ。自信、なくなっちゃったんだ。なんせ頭で考えすぎちゃって、気持ちよくないんだもんね。つらいんですよ。行き届かないもんね。オイラの感覚は耳の方が優れてるってこと。そして六弦くらいがちょうどいいって事なのよ。……色はもう、サヨコに任せた。」
「……はは」
「はは、じゃねえよ。お前さ、最近いいの描いてんじゃん」
「え?」
いいの描いてんじゃん?
……いいの?
いいの、って言った?今。
光郎の口から?
「おお!? 光郎、今なんて?」
「……もう言わねえ」
「何で!?」
「言わねえって」
「……ずるい」